インナーチャイルドという言葉、聞いたことありませんか?
誰もが人間関係に悩む現代社会で、あなたを生きづらくしているのは子供のころのトラウマや経験を引きずっているからではないでしょうか?
それを助けてくれるのがインナーチャイルドという考え方。
トラウマというほど大きな傷ではなくても、成長過程において、うまくいかなかったこと、怒られたこと、挫折したこと、みんないろいろ経験していますよね。
この記事では、インナーチャイルドとは何かから始まり、どのようなタイプがあるか、自分のインナーチャイルドとどう付き合っていくか、親としてどうすればよいかを書いています。
インナーチャイルドが癒された「ワンダーチャイルド」という心の在り方についても説明しましたので、是非参考にしてください!
では、さっそくいってみましょう。
インナーチャイルドとは?
インナーチャイルドは、直訳すると「内なる子供」という意味です。
傷ついたままあなたの中に隠れている子供だと想像してください。
ジョン・ブラッドショー氏の著作『インナーチャイルド―本当のあなたを取り戻す方法』(1993年)という本から注目され広まった考え方です。
今までの成長過程において、子供時代に上手くいかなかったことや、親や大人の心ない態度や言葉に傷ついたことなどあったと思います。
「インナーチャイルド」はそれらの心の傷や隠してきた感情を引き受けて心の奥底に沈んでいます。
大人になったあなたが今生きづらいと感じたり、自分らしさを出せないと思う原因を掘り下げていくと、このインナーチャイルドが心の奥から、「そんなことを言うとまた傷つくよ」とか「まだどうせ嫌われるよ」などのシグナルを発している場合が多くあるのです。
そこで、あなたのインナーチャイルドが持っている心の傷を癒していくことが大切になってきます。
なぜチャイルドか
大人になればある程度の処世術が身につき、他人の言動にうまく対処したり、相手と話し合ったりして問題を解決することもできます。
しかし、子供の間は、心も自我も発達途中で感性も鋭敏。
辛いことは何倍も辛いのに、傷つけてくるのは大人のほうが多いのです。
「イヤだ」と思っても「言うことを聞きなさい」、「もっと愛されてるって感じさせて」と思っても「忙しいから後で」と言われてしまいます。
親から理不尽なことで怒られた記憶は誰にでもあるのではないでしょうか?
そのたびに子供は自分の気持ちを圧し殺して、大人たちの気に入るようにふるまうことを憶えていきます。
子供は無条件に親が好きですし、大人に嫌われては生きていけないので、必死なのです。
「インナーチャイルド」はそのような経験が積み重なって無意識の中に溜まってしまい、大人になってもものの考え方や行動のしかた、他人との距離感などに悪影響が出る場合を指すのです。
程度の差はあっても、誰でもインナーチャイルドは持っていると言ってもいいでしょう。
インナーチャイルドとは?ー特徴(本人)について
誰でも心の中にインナーチャイルドがいると言われたら、「え、私のインナーチャイルドはどんな子?」と思いますよね。
インナーチャイルドのタイプ
インナーチャイルドにはいくつかのタイプがあります。
傷つき方の違いによって、大人になって出てくる特徴が違うので比べてみてください。
タイプを知ることで、自分のインナーチャイルドを癒していく手掛かりになりますので。
子供時代に愛情不足
人に嫌われることを極端に恐れ、好きでいてもらおうと過度に尽くしてしまう。相手に貢献することで依存しているタイプ。
厳しい親にレールを敷かれた子供時代
親に嫌われない良い子でいるのが癖になり、自分の感情や欲求を表に出せない。
期待に添った結果が出せないと人間性を否定されるような過度の期待
大きなプレッシャーに潰され、恐怖や不安、パニックなどを発症する場合も。親や世間から与えられた基準に沿って、自分は勝ち組、負け組と判断し、それに左右される。
親の言うことがくるくる変わった場合
自分の意見を言うことが怖くなったり、言いたいことが言えず誤魔化して嘘をつくようになったり。虚言癖に発展することも。
親の介護やケアをしなくてはならなかった場合
大人になってからも人を助けることで、自分の居場所を得ようとする。人助けを自己満足のため、自分が優位だと感じるためにし続けてしまうこともある。
親や大人に全く構われなかった場合
モラルや社会のルールを学ぶ機会が少なく、全て自分の思い通りにしがち。大人になっても自分の要求が通らなかった場合に、強い悲しみや怒りをコントロールできずそのまま表現してしまう。
インナーチャイルドは、自分を守るためのもの
上に挙げたように、インナーチャイルドは大人になったあなたの心のクセや行動パターンを作っていますが、それはあなた自身を守るためです。
「もう二度と傷つきたくない」という思いからの防御反応として鎧のように作り上げたもの。
でも、この防御反応のせいで、他人とうまく打ち解けられないとか、自分の気持ちを押し殺してしまう、などの問題となり、あなたの現在を辛くしている可能性も大アリなのです。
最悪の場合は、傷つけられたまま克服できていないので、無意識のうちに親をお手本にしてしまって、自分がされたことを子供にやり返してしまうということも起こり得ます。
ただし、心の中にインナーチャイルドが居ること全部が全部悪いことだとは言えません。
なぜなら、インナーチャイルドが辛すぎる経験や記憶を封印してくれていることもあるからです。
普段の自分は過去のことを忘れていて何とかうまく社会生活できていて、インナーチャイルドのほうがその時の記憶を持っている状態。
もちろんこの場合も、ゆっくりとカウンセラーさんなど専門家の助けを借りて、辛かった過去と向き合い、経験を言葉にして昇華させていくのが理想です。
でもこれは自分一人で急にできることではありませんし、心の傷を抉るだけになると危険です。
ですから、インナーチャイルドは自分を守ってくれていると位置づけ、すぐさま消し去ろうとしないでください。
自分が向き合える過去の体験を確認しながら気長に付き合っていくことが大切です。
インナーチャイルドとの付き合い方・癒し方
さてでは、どうやってインナーチャイルドと付き合っていけばいいのでしょうか?
あなたが今をうまく生きられないと感じている場合は、あなたのインナーチャイルドが持っている傷を癒すことが大切になってきます。
ただし、急ぎ過ぎないで、まずは自分が口に出せる嫌だった記憶から対処しましょう。
書き出し法
憶えている辛かった記憶を列記してみてください。
「あの時母親に○○と言われて嫌だった」
「あの時、兄弟と比較された」
などなど小さなことから。
いくつか集まると親が自分をどう育てていたか、子供の自分は何が辛かったのかがわかり、そこから自分のインナーチャイルドのタイプが掴めてくるでしょう。
現在の自分の行動パターンやものの考え方に影響しているところが見えてきませんか?
イヤだったこと一つ一つ、インナーチャイルドに向かって、「そう、辛かったよね」と言ってあげることも忘れないでください。
単なる一人二役のバカなやり取りに思えるかもしれませんが、大人になったあなたが「辛かった」と声に出して認めていくことで、「うん、でももう大丈夫」と傷は治っていくのです。
手紙
あなたに辛い思いをさせた相手に対して手紙を書いてください。
投函することが目的ではないので、他界していたり、住所がわからなかったりしても構いません。
「あなたはあの時○○しましたが、私はとても傷つきました。どうしてだったのですか?」と感情のままに書けばいいのです。
書きながら、辛かったと泣くことができたら、あなたのインナーチャイルドも一緒に泣いて、楽になっていきます。
泣くことには一番のカタルシス効果があり、気持ちを洗い流してくれます。
インナーチャイルド・セラピストやカウンセラーと話す
自分ひとりで癒せる心の傷は多くはありません。
自分のインナーチャイルドは大きな傷を抱えていると自覚したら、専門家に気軽に相談しましょう。
1対1でのカウンセリングや、グループセッションなどもあります。
グループでは、子供時代の辛い経験を手紙や作文に書き、読み合って聞いてもらったりします。
似た経験をした人に出会ったり、同じ思いを抱える人と話すのはとても有効です。
インナーチャイルドとは?ー特徴(親)について
インナーチャイルドのタイプを説明したところで親側の特徴にも少しずつ触れましたが、一口で言うと、子供が安心して子供でいられるかどうかです。
子供を不安に陥れていないか、年齢に似合わないやせ我慢をさせてないか、考えてみてください。
筆者の体験
両親が離婚すると揉めていた時期のことです。
私は自分の世界が壊れてしまうと感じて急に引っ込み思案になりました。
すると学校で、そこにつけ込んだかのようにイジメが始まりました。
その時の不安、イジメによる心の傷は今の性格にも影響しています。傷ついたままのインナーチャイルドが筆者の中にも居るというわけです。
もちろん、親には親の人生と幸せを追求する権利がありますから、「離婚したくても子供のために仮面夫婦を続けなさい」とは言えません。
離婚を選択するのであれば、大人同士落ち着いて話し合い、子供には理解できる範囲内で説明し、生活がどう変わるか、でも両親とも子供自身のことはしっかり愛していると伝えてあげてほしいのです。
「片方の親に捨てられた」と感じさせるのではなく、「一緒に頑張っていこう」と思わせてくれれば、子供は思っている以上に前向きに対処し、不安を感じることも減ります。
子供にインナーチャイルドを作りがちな親の例
子育ての両極端を避けましょう。過保護、過干渉、そして放任、放置にならないように。
「失敗したら子供にインナーチャイルドができてしまうんだ!」と大げさに構える必要はありません。
その時その時、子供の言い分をしっかり聞いてあげたら子供は安心しますから。
子供であっても一人の人格だと認めて愛してあげてください。
子供が傷つくのは、親の真意を見失ったときとも言えます。
ですから、子供の気持ちを考えずに親が突っ走ってしまうときが問題なのです。
子供への愛情表現が苦手
そばにいて見守るだけでもいいのです。アイコンタクトがあるだけで随分違います。子供によってはわざとイタズラして親の反応を見たりもします。
忙しくて子供に時間が割けない
幼児なら抱っこして寝る、学童なら一言でもいいから声をかける。メモを書く、ケータイでメッセージしてみるなど、できることはいろいろあります。柔軟に考えてみましょう。
幼稚園からのお受験など子供に人生のレールを用意
子供が自分の意見を持てるようになったら本人が次のステップを選べるようにしてあげてください。
過度の期待
子供は親をガッカリさせるのを恐がります。落胆した顔を見せるくらいなら褒めて伸ばすほうがいいので、目標を最初から高く上げ過ぎないことです。
大人の都合やその場しのぎの発言が多い
子供は親の言うことをしっかり憶えているものです。子供が「また言うこと違う~」とツッコみできるくらいが健全。
円満でない家庭、DV、アルコール依存他、家庭崩壊
親が不幸では子供も幸せでいられません。原因を取り除き、少しでも安定した環境を子供にあげられるよう行動を起こしてください。
インナーチャイルドとは?ーワンダーチャイルドについて
インナーチャイルドを少しずつ癒していくとどうなると思いますか?
「今の人間関係の悩みなどが消えていくんだろう?」という答え、正解ではあるのですが説明不足ですよね。
「ワンダーチャイルド」が心の中に現れるのです。
ワンダーチャイルドという言葉は、心理学者ユングが最初に用い、前述のジョン・ブラッドショー氏が著作『インナーチャイルド―本当のあなたを取り戻す方法』の中で考察を加えています。
ワンダーチャイルドとは一体何か?
ワンダーチャイルドとは生まれながらの子供の心。
この世の見るもの全てが目当たらしく、明るく生き生きとしていてクリエイティブ。
遊びの中で、「次はこうしてみよう、こうしたらどうなるんだろう?」と子供の知的好奇心は留まることがありません。
それは傷ついてインナーチャイルドになってしまう前の幼いあなた自身の姿です。
元々あなたは、キラキラと目を輝かせる子供らしい無邪気さや、楽しいことを楽しいと感じ、好きなものを好きといえるワンダーチャイルドだったし、大きくなるにつれてこのワンダーチャイルドを心に宿していました。
でも心がどんどん傷つくと、ワンダーチャイルドではいられなくなりインナーチャイルドに変化してしまいます。
インナーチャイルドはあなた自身を守ろうと鎧を固く作ってしまって現在、人との距離感がわからない、自分の意見を言えない、重たいと言われる、自分を大事にできない、などいろいろな問題を噴出します。
それだからこそ、心の傷に対処してインナーチャイルドを癒し、ワンダーチャイルドに戻してあげましょう、というアプローチが取られるのです。
インナーチャイルドがワンダーチャイルドに近づくと、憑き物が落ちたように人生が楽に感じられたり、人間関係が円滑になったりします。
心の風通しがよくなる感じです。
相手の発言を気にしてうじうじ悩むことは減りますし、自分はこう思うと言えるようになるので、相手もあなたのことを知ってくれて、黙っていた時よりもスムーズに物事が運びます。
ワンダーチャイルドを宿す人
一緒に居て気持ちいいなあと感じる相手、いつもいい笑顔でいられる人、問題が持ち上がっても解決策を見出せる人、生き生きとしてなぜか楽しそうな人、率直な人は、心の中がワンダーチャイルドに近いと言えます。
社会生活をしていますから、子供のように好きなことだけするわけにはいきませんし、他者を思いやって自分を後回しにすることはよくあります。
それでも、人間関係に苦痛を感じる場面が少ないと言えます。
わかりやすくするために、ここで、ワンダーチャイルドを宿す人と傷ついたインナーチャイルドの人を比較する、極端なたとえ話を聞いてください。
「残業して資料を作ってくれ」と上司に頼まれたとします。
ワンダーチャイルド系の人は、まず素直に残業イヤだなと感じます。でも大人として前向きに、筋道の立った考え方をします。
1. 自分に残業ができない理由があるかどうかスケジュール確認。→ナシ
2. その残業がどうしても必要なのか、上司に期日の確認→明朝までに必要
3. どんな資料を作るのか聞いてみると、「それ、どこかで見たことある」と感じました。ワンダーチャイルドを宿す人は友人も多く、普段から好奇心旺盛で、クリエイティブなのです。「そういえば、隣の課が似たような資料を先日作ってた!」と思いつき、フォーマットを借りてきて3時間かかるだろう残業が1時間で済みました。
このように、残業しても納得ずくですし、自分のアイディアを取り入れたりして作業を楽しんでしまったりもするのです。
それに対して、人間関係に悩みを持つインナーチャイルドの人は、「これを断ったら上司に嫌われる」「親の言うこと聞かなかったら怒られた、上司の言うことも聞かなきゃダメ」と感じてしまいます。
そして嫌々ながら残業してしまい、「早く帰りたい」という欲求を押し殺すので、またストレスを溜めることになるのです。
インナーチャイルドが癒され、ワンダーチャイルドに戻りやすい人間関係
深く思い合った恋人同士や夫婦間では、辛かった過去の話を聞いてもらったり、ただ一緒にいてもらうだけで、心の傷が癒されることが多々あります。
外面はしっかりとした大人でも、2人っきりになるとぐっと子供っぽくなって甘やかしたり甘えたり。
恋人同士のイチャイチャであると同時に、子供の気持ちに帰ってお互いのインナーチャイルドを癒し合っているのではないでしょうか。
ありのままの自分を認めてくれる相手というのはかけがえがありません。
ただし、自分のインナーチャイルドの傷つき方が酷い場合は、ある程度癒してからでないと恋愛自体が難しくなります。
恋愛は素直で率直な本来の自分らしさ(ワンダーチャイルドに近い状態)が勝負ですから、インナーチャイルドが作る防御壁は邪魔になるのです。
自分の問題を解決せずに恋人に依存すると相手の重荷になってしまいます。
恋愛が長続きしないと悩んでいる方は、自分のインナーチャイルドと向き合ってみることをおススメします。
インナーチャイルドとは?特徴や癒す方法についても!ーまとめ
いかがだったでしょうか?
自分の心の中には傷ついたままのインナーチャイルドが居るという考え方、掴めましたでしょうか?
インナーチャイルドは、大人のあなたの行動パターンや感じ方に影響を及ぼしています。
「自分はこういう性格だ」と思い込んでいるかもしれませんが、過去の辛さ、悲しさを清算できたら、現在のあなたはもっと楽に人生が送れるはずです。
また、親の立場になったら、子供さんに存分の愛情を注いであげてください。過保護や執着ではない、子供を一人の人格として早くから認める本当の愛情をです。
インナーチャイルドが抱える傷を少しずつ癒して、あなたも子供のころの生き生きとした自分、ワンダーチャイルドを取り戻してみませんか?